日本人はなぜ旅行できなくなったのか オーバーツーリズムの裏で進む「旅行離れ」
日本人の「旅行」が、今まさに転換点を迎えている。円安とインバウンド需要の急拡大によって観光地は活況を呈している一方で、日本人の旅行者数は国内・海外ともに伸び悩み、むしろ減少傾向が鮮明になっている。
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年10月の訪日外国人旅行者数は約390万人と、単月として過去最高水準を記録した。紅葉シーズンを背景に欧米や東南アジアを中心に訪日需要は強く、この流れが続けば年間でも過去最高を更新する見通しだ。
しかし、その陰で日本人の海外旅行者数は、2024年時点で約1300万人にとどまり、新型コロナ以前の2019年と比べて約65%。これは30年前、1994年とほぼ同水準であり、日本人の海外旅行は事実上「30年逆戻り」した形だ。
さらに深刻なのが国内旅行である。観光庁の宿泊旅行統計によると、2025年の日本人のべ宿泊者数は1月以降、前年同月比を下回る月が続いている。8月、9月ともに前年比マイナスとなり、2024年に見られた回復基調は失速した。
背景の一つが、インバウンド増加による宿泊価格の高騰だ。都市部ではビジネスホテルでさえ1泊1万円以下が難しく、高級ホテルでは1泊10万円超も珍しくない。稼働率が高止まりする中、ホテル側が日本人向けに価格を下げる必要がなくなっている現実がある。
加えて、コロナ禍の「GoToトラベル」などで割安な旅行に慣れた日本人にとって、現在の価格水準は割高感が強い。地方の割引制度も存在するが、交通費がかさみ、結果的に総額は抑えにくい。
しかし、根本的な原因はより深いところにある。それは「お金も時間もない」という、日本人の生活構造そのものだ。長引く賃金停滞、物価高、社会保険料の負担増により可処分所得は伸びず、余暇に回せる余力が削られている。加えて分散休暇が取りにくい日本の働き方では、旅行費用が高騰する繁忙期を避けることも難しい。
旅行は本来、生活に余裕があってこそ楽しめる余暇である。データ上では年末年始の旅行者数が微増しているものの、多くのライト層にとって「旅行したいができない」状況が常態化している。日本人の旅行離れは、一過性の現象ではなく、日本社会の構造問題を映し出す鏡と言えるだろう。
記事のまとめ▼
- 訪日外国人旅行者数は過去最高水準で推移
- 日本人の海外旅行者数は30年前と同水準に逆戻り
- 国内旅行の日本人宿泊者数も2025年は減少傾向
- ホテル価格高騰と観光地混雑が国内旅行の障壁に
- インバウンド需要で日本人向け価格が成立しにくい
- コロナ禍の割引施策とのギャップで割高感が拡大
- 実質賃金の停滞と物価高で可処分所得が圧迫
- 分散休暇が難しい働き方も旅行離れを加速
- 日本人にとって旅行が「贅沢」になりつつある現実
参照:Yahoo!ニュース
Xの反応

正直、国内旅行でも高すぎて気軽に行けなくなったな。混んでて高いなら、家で休む方がマシって思う人が増えるのも自然だと思う。

観光立国なのに、日本人が観光できないのはさすがに本末転倒だな。インバウンド好調って言われても、国内向けは置き去り感が強い。
